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東京地方裁判所 昭和45年(借チ)2012号・昭45年(借チ)59号・昭45年(借チ)2151号 決定

〔主文〕右飛鳥馬治平から大庭重信に対し別紙目録(三)記載の建物および同(二)記載の賃借権を代金二〇、四八九、〇〇〇円で売渡すことを命ずる。

右飛鳥馬は、右大庭に対し、同人から前項の金員の支払を受けるのと引換えに右建物の引渡および所有移転登記手続をせよ

右大庭は、前項の建物の引渡および登記手続と引換えに右飛鳥馬に対し金二〇、四八九、〇〇〇円の支払をせよ。

〔理由〕一、本件において借地権譲渡許可申立人飛鳥馬治平(以下単に「相手方」という。)から別紙目録(一)記載の土地(以下「本件土地」という。)の賃借地権譲渡許可の申立が適法になされたところ、右事件の相手方大庭重信(以下単に「申立人」という。)から別紙目録(三)の建物(以下「本件建物」という。)および本件土地の賃借権譲受申立が適法になされたので、借地法九条の二第三項により本件建物および本件土地の賃借権の各対価を定めて申立人への譲渡を命ずるべきである。(相手方からの借地条件変更申立は、申立人からの買受申立がないことを前提とするものと解する。)

二、そこで、本件土地の賃借権および本件建物の対価につき検討する。

1 鑑定委員会の意見の要旨

本件土地賃借権価格を金一八、六六四、〇〇〇円建物価格を金二、〇九六、〇〇〇円(合計金二〇、七六〇、〇〇〇円)と定めるを相当とする。

本件土地の更地価格は3.3平方米当り金六五〇、〇〇〇円、建付減価率三%、建付地価格金六三〇、五〇〇円、借地権割合は七五%、借地権価格は三、三平方米当り金四七二、八七五円。

借地権を他に譲渡する場合の地主の承諾料は慣行として借地権価格の一〇%であるが、本件においては昭和四一年二月一二日調停成立の際相手方から申立人に金七〇〇、〇〇〇円の支払いがあり、自然発生的借地権価格に創設的借地権価格が加味されている。

右金員の支払の時点の残存賃貸借期間は6.5年、現時点の残期間は2.5年であるから右金員に6.5分の25を乗じた金二七〇、〇〇〇円を前記借地権に一〇%を乗じた額から控除した金一、七七四、〇〇〇円が地主への承諾料となる。賃貸人が賃借権を譲受ける対価は借地権価格から右承諾料を控除した一八、六六四、〇〇〇円となる。建物中、家屋番号五〇四の二の再調達原価金一一〇、〇〇〇円、積算価格金四一、五〇〇円(3.3平方米当り)で総額金一、四八四、〇〇〇円。家屋番号五〇四の三の建物の再調達原価金九〇、〇〇〇円、積算価格金三四、〇〇〇円。総額金六一二、〇〇〇円となる。

2 鑑定意見に対する意見

(申立人)

本件土地賃借権価格を金一五、八四七、〇〇〇円、建物価格を金一、七八八、〇〇〇円と主張する。

本件土地の更地価格は3.3平方米当り金六〇〇、〇〇〇円、その借地権割合は七〇%。第三者に譲渡する場合の地主の承諾料はその一〇%であり、地主が買受ける場合には、借地権価格から右承諾料を控除した額が相当である。鑑定委員会のいう金七〇〇、〇〇〇円は単に示談金として授受されたものであるから、これにより創設的借地権価格が加味されたとしてその一部を控除するのは失当である。

建物中家屋番号五〇四の二の家屋は一階(鉄筋部分)と二階(木造部分)に分けて評価すべきである。一階部分の再調達原価3.3平方米当り金八〇、〇〇〇円、積算価格は金三二、〇〇〇円、二階部分の積算価格金三四、〇〇〇円とするのが相当である。

(相手方)

特に意見はない。

3 当裁判所の判断

(一) まず、本件土地の借地権価格についてみるに、鑑定委員会は、本件土地の建付地価格を3.3平方米当り金六三〇、五〇〇円、借地権割合をその七五%として、借地権の総額を金二〇、四三七、六〇〇円とする。当裁判所も本件土地およびその周囲の状況にてらして、本件土地の借地権を第三者に譲渡する価格として右金額をもつて相当と認める。

ところで、近時大都市およびその周辺の地価の上昇は著しく、地代の上昇が種々の要因からこれにともわないため、高率の借地権割合が形成されているが、それは各借地権者の個人的事由によるものでなく、主として社会経済的原因によるものであるから、借地人がその借地権を処分してその利益を顕在化するに際してはその一部を地主に還元するのが公平に適するというべく、借地法九条の二第三項により地主が借地権を譲受ける際の対価を決する場合にも、右と同様の考えにより、一般第三者への譲渡相当額から、右の地主への還元部分を差引くべきである。そしてその額は、借地契約の従前の経緯等を考慮し個別に決するほかはないが、いわゆる名義書換料として地主への配分につき慣行的割合が存する地域にあつては、特段の事由のないかぎり、これに従うべきである。けだし、昭和四一年の借地法の改正は、土地の合理的利用を促進し、紛争の予防をはかることを目的とするが、これををこえて、借地人、地主のいずれにも新たな利益を付与するものとは解されないからである。

しかして、取調べた資料によれば、相手方は、昭和一七年に、申立人から本件土地を、非堅固建物所有の目的、期限昭和四七年九月末日までの約で賃借したが、昭和三八年申立人から家屋収去土地明渡の訴訟が起され、同四一年二月一二日相手方との間で、(1)申立人は、相手方が前記の約の賃借権を有することを確認し、車庫(一部鉄筋コンクリート造)の現状を認める(2)相手方は賃料の値上げに応じ(3.3平方米当り二五〇円)、かつ示談金として金七〇万円を支払う旨を趣旨とする調停が成立したこと、本件土地附近において、借地権を第三者に譲渡する際地主に支払う名義書換料の慣行的割合は借地権価格の一割相当であるこのの各事実を認めることができ、右事実によれば、本件賃貸借において、当該地域の地主への慣行的配分割合を変更する必要は存しないので、申立人の買受ける借地権の対価は、前記一般の借地権価格からその一〇%を減じた金一八、三九三、八四〇円をもつて相当とする。なお、鑑定委員会は、相手方が前記調停の際支払つた一部を借地人に還元すべきであるとするが、前記調停の趣旨は、家屋収去土地明渡請求につき、相互の互譲の結果、紛争前の賃貸借関係に復する示談金として金員が支払われたもので、右金員をもつて期間を延長する等の新たに借地関係を創設する金員または地代の前払金とは認められず、これを、借地権の譲渡に対する地主の承諾料に影響する金員とはみなしがたいので、その一部を、地主の取分から減ずるのは相当でない。

(二) つぎに、建物価格については、鑑定委員会の意見に従い、家屋番号五〇四番二につき金一、四八四、〇〇〇円、家屋番号五〇四番三につき金六一二、〇〇〇円合計金二、〇九六、〇〇〇円と定めるのを相当とする。

(三) 以上の算定により、申立人が譲受ける本件土地の賃借権および本件建物の対価を合計金二〇、四八九、〇〇〇円(千以下切捨て)と定め、借地法九条の二第三項により主文のとおり決定する。(筧康生)

目録

(一) 上地

東京都港区赤坂五丁目五〇四番一

宅地 139.13平方米(42.09坪)

(二) 賃借権

目的土地 (一)記載のとおり

契約の日 昭和一七年

期間 昭和四七年九月三〇日まで

目的 木造その他堅固でない建物を所有する目的

(三) 建物

東京都港区赤坂五丁目五〇四番地

家屋番号 五〇四番二

一 鉄筋コンクリート造一部木造スレート瓦葺二階建居宅兼車庫

一階 66.18平方米

二階 52.06平方米

右同所

家屋番号 五〇四番三

一 木造スレート瓦葺 二階建居宅

一階 29.75平方米

二階 29.75平方米

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